じゃがいもを収穫した際、表面にザラザラとした「かさぶた」のような斑点ができていることがあります。
それは「そうか病(瘡痂病)」という、じゃがいも栽培で発生しやすい病気です。
そうか病にかかったじゃがいもは深く皮を剥けば食べることはできますが、見た目が著しく損なわれるため、出荷規格外となり秀品率(市場価値)が大きく低下してしまいます。
本記事では、そうか病が発生する原因や、似た病気との見分け方、具体的な予防対策をわかりやすく解説します。
さらに後半では、病害虫の発生リスクを抑える栽培管理のコツも紹介します。
じゃがいも「そうか病」とは?特徴と見分け方
対策を立てる前に、まずはそうか病がどのような病気なのか、その特徴と「正しい見分け方」を押さえておきましょう。
実は、そうか病に似た別の病気もあり、原因を勘違いして間違った対策をしてしまうケースが少なくありません。
そうか病の基本症状
そうか病に感染すると、じゃがいも(塊茎)の表面に褐色のかさぶた状の斑点(病斑)が形成されます。
症状が進行すると、このかさぶたが大きく盛り上がったり、逆に中央がやや陥没したりして、表面がクレーターのようにザラザラになります。
間違えやすい「粉状そうか病」との見分け方
最も見分けが難しく、かつ注意しなければならないのが「粉状そうか病(こうじょうそうか病)」です。名前は似ていますが、原因となる菌の種類も、発生する土壌環境もまったく異なります。
| 項目 | そうか病 | 粉状そうか病 |
|---|---|---|
| かさぶたの状態 | 乾燥して硬く、ザラザラしている。 | かさぶたが破れると、中から茶色い「粉(胞子)」が出てくる。 |
| 発生しやすい土壌pH | アルカリ性〜弱酸性(pH6.0以上) | 酸性(pH5.0〜5.5前後) |
| 発生しやすい水分環境 | 土壌が乾燥しているとき | 土壌が多湿(水はけが悪い)のとき |
⚠️ 注意したいポイント
もし「粉状そうか病」なのに「そうか病」だと勘違いして土壌を酸性に傾ける対策をとってしまうと、かえって病勢を悪化させてしまいます。「かさぶたを破ったときに粉が出るか」「水はけが悪くないか」を必ずチェックしましょう。
害虫による「食害跡」との見分け方
土の中にいるケラやコガネムシの幼虫にじゃがいもがかじられた跡も、一見するとそうか病のように見えることがあります。
虫に食われた跡は、かじられた部分が滑らかに凹んでいるのに対し、そうか病は周囲の組織がコルク化してガサガサと毛羽立ったようになるのが特徴です。
【最重要】じゃがいもそうか病が発生する「4つの原因」
そうか病を根本から防ぐためには、「なぜ発生するのか」という原因を正しく理解する必要があります。そうか病の発生には、以下の4つの要因が深く関係しています。
原因①:土壌中に潜む「放線菌」
そうか病の原因は、カビやウイルスではなく、土壌中に常在している「放線菌(Streptomyces属菌)」という細菌の一種です。この菌は普段、土の中の有機物を分解して暮らしていますが、じゃがいもが肥大する時期になると肥大中の若い表皮や皮目(レンチセル)などから侵入し、毒素を出して組織をコルク化(かさぶた化)させます。土壌中では長期間生存できるため、一度発生すると対策が難しい病気です。
原因②:土壌pH(酸度)の高さ
放線菌は、土壌pHが6.0以上(中性〜アルカリ性)になると急激に活発化します。
日本の土壌は本来酸性に傾きやすいため、野菜作りでは「石灰(消石灰や苦土石灰)」を撒いて中和するのが一般的です。しかし、じゃがいも畑に石灰を過剰に撒きすぎて土壌がアルカリ性に傾くと、そうか病の菌にとって最高の繁殖環境を作ってしまうことになります。
原因③:塊茎肥大期の「土壌の乾燥」
じゃがいもの赤ちゃんが形成され、徐々に大きくなっていく時期(一般的に開花期前後)を「塊茎肥大期」と呼びます。この時期に土壌が乾燥していると、原因菌の感染リスクが跳ね上がります。
土壌が乾燥すると、原因菌が感染しやすい環境になり、塊茎への感染リスクが高まります。
原因④:地温の上昇と未熟な堆肥
地温が20〜25℃程度になると、原因菌の活動は活発になります。そのため、高温条件では発病リスクが高まる傾向があります。
また、腐熟が不十分な堆肥は土壌環境や微生物バランスを乱し、そうか病の発生を助長することがあります。堆肥は十分に腐熟したものを使用しましょう。
今日からできる!そうか病を予防する4つの対策
そうか病は、じゃがいもが土の中で育つため、一度感染してしまうと栽培途中で治療することが非常に困難です。そのため、「収穫後(次作への準備)」および「植え付け前」の予防対策が勝負を分けます。
対策①:土壌pHを「5.0〜5.5(弱酸性)」にコントロールする
そうか病対策の基本中の基本は、土壌をじゃがいもが好む「弱酸性(pH5.0〜5.5)」に保つことです。
- 石灰の施用を控える: 前作で石灰を多く使った畑では、じゃがいも植え付け時の石灰施用を見合わせます。
- 生理的酸性肥料を使う: 肥料には、土壌を酸性に傾ける効果がある「硫酸アンモニウム(硫安)」や「硫酸カリ」などを優先的に選びましょう。
- イウオウ資材の活用: すでにpHが高く、毎年そうか病に悩まされている場合は、土壌酸度を下げる効果がある「ピートモス」や「硫黄粉末」を土に混ぜ込むのも有効です。
対策②:塊茎形成期の「適切な潅水(水やり)」
じゃがいものイモが肥大し始める時期(花が咲き始める頃)に雨が少なく、土がパサパサに乾燥している場合は、畝間への潅水(水やり)を行いましょう。土壌に適度な湿り気(容水量60〜80%程度)を持たせることで、原因菌の活動を抑制し、感染を大幅に防ぐことができます。
対策③:輪作の実施と緑肥(対抗植物)の活用
同じ畑で毎年じゃがいもを作り続ける「連作」は、土壌中の原因菌を増やす最大の原因になります。
一度そうか病が出た畑では、少なくとも2〜3年はナス科以外の作物(ネギ類やアブラナ科など)を育てる「輪作」を行いましょう。特に、イネ科の緑肥(エンバクやソルゴー)を栽培して土にすき込むと微生物環境の改善が期待でき、そうか病の発生を抑える効果が期待されています。
対策④:健全な種芋の選定と「品種選び」「種芋消毒」
- 抵抗性品種を選ぶ: そうか病に対して強い抵抗性を持つ品種(「コナフブキ」「さやか」「スノーデン」など)を選ぶことで、被害を抑えられます。ただし品種の抵抗性は地域差があるため、推奨品種は種苗会社や普及センターの情報も参考にしましょう。
- 検査合格済みの種芋を使用する: 自家採取した種芋や、スーパーで買ったじゃがいもを種芋にすると、すでに菌が付着しているリスクが高まります。必ず「植物防疫検査」に合格した健全な種芋を購入してください。
- 種芋消毒の徹底: 種芋は健全なものを使用し、必要に応じて登録農薬による種いも処理や土壌処理を行いましょう。ただし、そうか病は土壌伝染が主体であるため、土壌管理と組み合わせることが重要です。
そうか病が発生した畑は翌年どうする?
そうか病は、一度発生すると原因菌が土壌中に長期間残るため、「今年だけの病気」と考えるのは危険です。しかし、適切な土壌管理を行えば、翌年以降の発生リスクを下げることは十分可能です。
翌年もきれいなじゃがいもを収穫するために、以下のポイントを意識しましょう。
まずは土壌pHを確認する
そうか病は、土壌が中性〜アルカリ性に傾くほど発生しやすくなります。そのため、翌年もじゃがいもを栽培する予定がある場合は、まず土壌酸度(pH)を確認することが大切です。
家庭菜園であれば、市販の土壌酸度計やpH試験紙でも測定できます。pHが高い場合は、石灰の施用を控えたり、生理的酸性肥料を活用したりして、じゃがいもの栽培に適した弱酸性(pH5.0〜5.5程度)の土壌を目指しましょう。
連作を避けて輪作を行う
そうか病が発生した畑で翌年も続けてじゃがいもを栽培すると、再び発病するリスクが高くなります。
可能であれば2〜3年以上はナス科作物の連作を避け、ネギ類やアブラナ科など別の作物を栽培する輪作を取り入れましょう。また、エンバクやソルゴーなどのイネ科緑肥を活用すると、土壌環境の改善につながり、そうか病の発生を抑える効果が期待できます。
土壌環境を改善する
そうか病は、乾燥した土壌で発生しやすい病気です。翌年に向けては、十分に腐熟した堆肥を施用し、排水性と保水性のバランスが良い土づくりを心掛けましょう。
また、じゃがいものイモが肥大する時期に土壌が乾燥しすぎないよう、必要に応じて潅水できる環境を整えておくことも予防につながります。
種芋や品種を見直す
前年にそうか病が発生した場合は、種芋や栽培品種を見直すことも重要です。
必ず検査済みの健全な種芋を使用し、地域でそうか病の発生が少ないとされる品種を選ぶことで、被害を軽減できる可能性があります。また、必要に応じて登録のある農薬による種いも処理や土壌処理を行う場合は、ラベルに記載された使用方法を守って使用しましょう。
翌年の発生を防ぐためには、「どの畑で発生したか」「土壌pHはどうだったか」「どの品種で被害が大きかったか」といった情報を記録し、毎年の栽培管理に活かすことが重要です。こうした記録を積み重ねることで、そうか病だけでなく、さまざまな病害虫の予防にも役立ちます。
そうか病の被害を最小限に!早期発見・早期対策の重要性
ここまで原因と対策を見てきましたが、そうか病の最も厄介な点は「土の中で病気が進むため、収穫するまで結果がわからない」という点にあります。
収穫時に土を掘り返して初めて症状に気付くケースも少なくありません。
これを防ぐためには、単にマニュアル通りの対策をするだけでなく、日々の栽培データの蓄積による「早期発見・早期対策」が不可欠です。
- 「今年はどの畝でそうか病が発生したか」
- 「その時の土壌pHや、開花期の降水量はどうだったか」
- 「どの品種で被害が軽かったか」
こうした「小さな違和感」や「過去のデータ」を正確に記録・管理しておくことこそが、翌年以降の発生リスクを先回りして潰す、唯一にして最強の防御策となります。
面倒な病害虫管理・記録をスマートに!農家向けアプリ「アグリハブ」
とはいえ、「毎日ノートに土壌の数値や病気の記録をつけるのは面倒…」「そうか病に使える農薬を調べるために、分厚い取扱説明書やネットを探し回るのは大変」と感じる方も多いのではないでしょうか。
農業の現場の負担を減らし、スマートな栽培管理をサポートしたい!
そんな想いから開発されたのが、農家向け栽培管理アプリ「アグリハブ」です。
① 少しの異変も逃さずスマホで記録(早期発見・早期対策)
アグリハブを使えば、畑で見つけた「少しの異変」や、その日の土壌pH、気になった生育状況などを、スマホを取り出してその場ですぐに写真付きで記録できます。
「去年、そうか病が出たのはこのエリアだったな」「今年は開花期に雨が少なかったから、早めに水を撒こう」といった、経験と勘だけに頼らない、確実なデータに基づいた先手の防除計画(早期対策)が可能になります。
② 最適な農薬がすぐに見つかる(簡単検索)
「そうか病の予防に使える農薬って何だっけ?」「希釈倍率や、収穫の何日前まで使える?」と迷ったときも、アグリハブが大活躍します。
アプリ内で「対象作物:じゃがいも」「病害名:そうか病」とタップするだけで、現在登録されている有効な農薬が瞬時に一覧表示されます。
農薬検索の機能については、以下の公式Youtubeでも解説しています。
最新の農薬登録情報に準拠しているため、倍率の間違いや使用時期のミスを防ぎ、安全・確実な防除を直感的に行えます。
③ スマートな栽培管理で秀品率アップ!
農薬の散布記録や肥料の投入量、日々の作業スケジュールまで一元管理できるため、資材の無駄を省き、栽培のPDCAサイクルを劇的に回しやすくなります。アグリハブを日々の相棒にすることで、そうか病をはじめとする病害虫トラブルを未然に防ぎ、秀品率の高い美しいじゃがいもの収穫量を増やすことができます。
まとめ
じゃがいものそうか病は、一度発生すると土壌に原因菌が残り続ける厄介な病気です。
しかし「土壌pHのコントロール(弱酸性)」と「塊茎肥大期の乾燥防止」という2大原因をしっかり抑えれば、発生リスクを下げることができます。
そして、病気に負けない確実な土壌作り・栽培管理を行うためには、日々の「記録」と「正しい農薬選び」が何よりの武器になります。
「今年こそは綺麗なじゃがいもをたくさん収穫したい!」
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